第149回


Googleスプレッドシートのグラフ機能は数回の操作で使えますが、思ったとおりの図にならないという相談も絶えません。原因の多くは、操作ではなくデータの並べ方にあります。
本記事では作成手順に加えて、種類の選び方と、単位の異なるデータを重ねる複合グラフの作り方までを解説します。

範囲を選び、挿入からグラフを選び、種類を決める。スプレッドシートでグラフを作る手順はこの3つの操作で完結します。
まずグラフにしたいデータの範囲を選択します。見出しの行や列も含めて選んでおくと、そのままグラフの軸名や凡例に使われます。次に、上部のメニューから挿入、グラフと進みます。この時点で、スプレッドシートがデータの形を判断して自動的にグラフを作成します。
画面右側にグラフエディタが表示され、ここで種類や見た目を調整します。自動で選ばれた種類が意図と違う場合は、設定タブのグラフの種類から選び直してください。作成したグラフは、ドラッグで位置を移動し、四隅をつまんで大きさを変えられます。

グラフが思いどおりにならない相談を受けたとき、原因のほとんどは元のデータにあります。操作を説明する前に、表の形を確認してみましょう。
グラフ機能が前提としているのは、一行目が見出しで、二行目以降が同じ形式のデータという構造です。この形から外れるほど、自動判定は外れます。
二つ目は実務でよく起きます。「1,200円」と入力された列は数値ではなく文字列です。見せ方は表示形式で整え、セルの中身は数値だけにしておいてください。この習慣ひとつで、グラフも集計関数も素直に動くようになります。

種類の選択は好みの問題ではありません。何を伝えたいかによって、適した図は決まります。
| 種類 | 伝えられること | 適した場面 |
|---|---|---|
| 縦棒グラフ | 項目どうしの大小の比較 | 部署別や商品別の実績を並べる |
| 横棒グラフ | 項目名が長い場合の比較 | アンケートの選択肢別の集計 |
| 折れ線グラフ | 時間に沿った変化 | 月次の推移、年度ごとの傾向 |
| 円グラフ | 全体に占める割合 | 構成比を示す。項目数は5つ程度までが目安 |
| 積み上げ棒グラフ | 合計と内訳の両方 | 合計の推移と、その中身の変化を同時に見せる |
| 散布図 | 二つの数値の関係 | 広告費と受注数の関係を確認する |
円グラフは見栄えがよいため多用されがちですが、項目が増えると比較が難しくなります。7項目を超えるようなら、横棒グラフへ切り替えたほうが読み手には親切です。

グラフの種類を先に決めてからデータを当てはめる進め方は、順序が逆です。まず、そのグラフで何を言いたいのかを一文にしてください。
「今期は前期より伸びている」と言いたいのか、「A支店が突出している」と言いたいのか、「季節による波がある」と言いたいのか。伝えたい一文が決まれば、適した種類は自動的に絞られます。
| 伝えたい一文 | 適した種類 | 強調する工夫 |
|---|---|---|
| 前期より伸びている | 縦棒グラフ、または折れ線グラフ | 比較する二期だけに絞る |
| 特定の項目が突出している | 横棒グラフ | 大きい順に並べ替える |
| 季節による波がある | 折れ線グラフ | 複数年を重ねて表示する |
| 構成が変化している | 積み上げ棒グラフ | 割合で表示して比率の変化を見せる |
| 二つの要素に関係がある | 散布図 | 傾向を示す線を追加する |
一枚のグラフで複数のことを伝えようとすると、要点がぼやけます。言いたいことが二つあるなら、グラフも二枚に分けるとよいでしょう。情報を絞ることが、伝わりやすさにつながります。
グラフのタイトルにも、この一文をそのまま書いておきましょう。「売上推移」という無味乾燥な見出しより、「前期比で伸びた三支店」と書かれたグラフのほうが、読み手は要点を掴めます。

作成した直後のグラフは、読み手にとって不親切なことが多いものです。数分の調整で、伝わり方は大きく変わります。
グラフエディタのカスタマイズタブでは、タイトル、軸の名前、凡例の位置、系列の色などを設定できます。最低限、グラフのタイトルと縦軸の単位は入れておきましょう。金額なのか件数なのかがわからないグラフは、その場で質問を受けることになります。
系列ごとの色も重要です。会社の資料全体で色の意味を統一しておくと、複数のグラフを並べたときに読み手が混乱しません。たとえば当年を濃い色、前年を薄い色に固定するといった決め事です。
縦軸の範囲にも注意が必要です。既定では0から始まらないことがあり、わずかな差が大きな変化に見えてしまいます。意図せず誇張した図になっていないか、最小値の設定を確認する習慣をつけておきましょう。

生のデータをそのままグラフにできる場面は、実務では多くありません。多くの場合、集計してからでないと意味のある図になりません。
たとえば売上の明細が一件ずつ並んだ表があったとして、そのままグラフにしても点が散らばるだけです。営業所ごと、月ごとに合計してから図にする必要があります。この集計を担うのがピボットテーブルです。
挿入からピボットテーブルを選び、行に営業所、列に月、値に売上の合計を指定します。数式を書かずに集計表ができるため、集計の切り口を変えたいときも項目を入れ替えるだけで済みます。この集計結果を範囲に指定してグラフを作れば、目的の図になります。
切り口を頻繁に変える資料であれば、スライサーという絞り込みの部品を追加しておくと便利です。閲覧する人が自分で条件を切り替えられるようになり、同じ表から複数の視点を得られます。グラフを何枚も作るより、絞り込める一枚を用意するほうが実用的です。

売上金額と受注件数のように、桁も単位も違うデータを並べたい場面があります。そのまま重ねると、片方が潰れて見えなくなります。
解決策が複合グラフです。グラフエディタの設定タブでグラフの種類から複合グラフを選ぶと、系列ごとに棒と線を使い分けられます。さらに、系列の設定で軸を右軸に変更すると、その系列だけ別の目盛りで表示されます。
たとえば売上金額を棒グラフで左軸に、受注件数を折れ線で右軸に置く。この形にすると、金額の大きさと件数の動きを一枚で追えます。会議資料でよく求められる表現であり、覚えておくと重宝します。
左右で異なる目盛りを使うグラフは、見せ方によって印象を操作できてしまいます。二つの線が交差する位置は、軸の範囲設定で自由に動かせるためです。社外へ出す資料では、軸の設定に恣意性がないかを確認しておきましょう。
複合グラフは便利ですが、三つ以上の系列を詰め込むと読み解きにくくなります。伝えたい関係が二つに絞れているかどうかを、作る前に確認しておきましょう。

毎月グラフを作り直している業務があるなら、一度だけ作って更新される形へ変えられないかを検討してみましょう。
要点は、データ範囲の指定方法にあります。行が増えることを見込んで、列全体を範囲として指定しておけば、下にデータを追加するだけでグラフへ反映されます。行番号で範囲を区切っていると、追加したデータが含まれません。
データを追加する場所も決めておきましょう。表の途中に挿入する運用と、末尾へ追記する運用では、扱いやすさが違います。末尾へ追記する形に統一しておけば、範囲の指定も単純に済みます。
この四つを整えると、毎月の作業は「データを追記して、資料の更新ボタンを押す」だけになります。作業を減らす最も確実な方法は、作り直さない構造にすることです。

グラフが表示されない、空白のまま出てくるという相談は、原因が限られています。順に確認していきましょう。
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| グラフが空白になる | 選択範囲に数値が含まれていない | 数値の列を範囲に含めて選び直す |
| 系列が意図と違う | 行と列の解釈が想定と逆になっている | 設定タブで行と列を入れ替える |
| 一部のデータが反映されない | 数値が文字列として入力されている | 単位や記号を取り除き、表示形式で整える |
| 範囲が正しく取れない | 結合されたセルや空白行が含まれている | 結合を解除し、空白行を削除する |
| 編集できない | 閲覧権限しか与えられていない | ファイルの所有者に編集権限を依頼する |
三番目の文字列問題は、他システムから書き出したデータを取り込んだときに頻発します。書き出しの設定を見直せる場合は、そちらを直したほうが根本的な解決になります。

グラフは、作り手の意図とは無関係に印象を作ります。誠実な資料にするための最低限の作法を押さえておきましょう。
まず、棒グラフの縦軸は0から始めましょう。途中から始めると、わずかな差が大きな変化に見えます。折れ線グラフでは変化を強調するために範囲を絞ることもありますが、その場合は軸の値が読み取れる状態にしておく必要があります。
次に、比較する期間の長さをそろえておきましょう。前年は12カ月分、今年は9カ月分という状態で棒を並べると、今年が落ち込んでいるように見えます。同じ条件で比べていることが一目でわかるよう、期間を明記しておきたいところです。
| 避けたい表現 | 読み手に与える誤解 | 正しい扱い |
|---|---|---|
| 縦軸を途中から始める | 差が実際より大きく見える | 0から始めるか、軸の値を明示する |
| 期間の長さが違うものを並べる | 増減を誤って読み取られる | 期間をそろえるか、注記を入れる |
| 母数の小さい割合を円グラフにする | 数件の差が大きな割合に見える | 実数を併記する |
| 三次元の装飾を加える | 手前の要素が大きく見える | 平面のグラフを使う |
三番目は社内の調査でよく起きます。回答が10件しかないアンケートを割合で示すと、一人の回答が10パーセントとして表示されます。実数を併記しておけば、読み手が過度に重く受け止めることを防げます。

グラフはスプレッドシートの中だけで完結しません。報告書やプレゼン資料へ持っていくときの扱い方に、ひと工夫の余地があります。
グラフをコピーしてGoogleドキュメントやGoogleスライドへ貼り付ける際、元のスプレッドシートへリンクした状態で貼り付けられます。この形にしておくと、元データが更新されたときに資料側で更新ボタンを押すだけで最新の図に差し替わります。
毎月同じ資料を作っている業務であれば、この仕組みだけで作業時間が大きく減ります。数字を貼り直す作業がなくなるため、転記ミスの心配も消えます。定例報告を担当している方は、一度試してみてください。
外出先でグラフを確認したい場面もあります。スプレッドシートのアプリでもグラフの表示と簡単な作成は可能ですが、細かな調整はパソコンで行うほうが確実です。画面が小さく、設定項目にたどり着くまでの手数が増えるためです。
実務的な使い分けとしては、作成と調整はパソコン、確認と共有はスマートフォン、という形が無理がありません。移動中に数字を確認できるだけでも、判断の速さは変わります。
資料の形式が指定されていて、リンクによる貼り付けが使えない場合もあります。グラフのメニューからダウンロードを選ぶと、画像や書類の形式で書き出せます。
ただし、書き出した時点の数字で固定されます。後から元データが更新されても反映されないため、日付を資料に明記しておきましょう。いつ時点の数字かが書かれていない資料は、会議で確認を求められます。

個人がその都度グラフを作る運用は、担当者が代わると途切れます。継続的に見る指標であれば、仕組みとして残しておきましょう。
まず、データを溜める場所を一箇所に決めます。担当者ごとに別のファイルを作っていると、集計のたびに統合作業が発生します。共有ドライブに置いた一つのファイルへ集約し、そこから各種のグラフを作る構成が扱いやすいでしょう。
扱うデータが大きくなり、スプレッドシートでは重くなってきた段階では、別の道具を検討する時期です。BigQueryにデータを集約し、Looker Studioで可視化する構成にすれば、数百万件規模のデータでも快適に扱えます。売上やPOS、決済、顧客、経理といった社内の多様なデータを一元管理し、分析レポートを構築する形です。
サテライトオフィスからGoogle Workspaceを購入している企業であれば、この分析ソリューションを無償で利用できます。詳しくはサテライトオフィスのBigQuery/Looker Studio分析ソリューションから詳細をご確認ください。

スプレッドシートのグラフ作成でつまずく原因は、操作ではなくデータの形にあります。数値は数値として入力し、結合セルを避ける。この二点を守るだけで、大半の問題は避けられます。
そのうえで、伝えたいことに合った種類を選ぶとよいでしょう。比較なら棒、推移なら折れ線、構成比なら円。単位の違うデータを重ねたいときは複合グラフという選択肢があります。作り方を覚えるより、選び方を身につけるほうが資料の質は上がります。
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