第168回


社内の意識調査、研修の受講後アンケート、セミナーの申込受付など、Googleフォームは追加費用なしで使え、作成そのものは十数分で終わります。手軽さゆえに、社内のあちこちで使われているという企業も多いでしょう。
ただ、集まった回答が活かしきれなかったという経験はないでしょうか。原因の多くは設問の設計にあります。
本記事では作成手順を押さえたうえで、回答の質を左右する設計の勘所と、集計から活用までの流れを整理します。

フォームの作成画面を開く前に、決めておくべきことがあります。集めた回答を使って、何を決めるのかという一点です。
「とりあえず意見を聞いてみよう」という動機で作られたアンケートは、集計してから困ります。自由記述が大量に集まり、読むだけで数時間かかり、結局まとめられずに終わる。よくある結末です。
先に決めるのは、この結果を見てどんな判断を下すのかという点です。回答を集める目的ではなく、回答を見た後に取る行動から逆算してみましょう。行動が決まれば、必要な設問は自然と絞り込まれます。設問が10問を超えるようであれば、目的が拡散していないか見直してみてください。

作成の流れは三段階です。フォームを作り、質問を追加し、配布する。それぞれの段階でつまずく箇所は限られています。
Googleフォームの画面から空白のフォームを選ぶか、用意されているテンプレートを開きます。まずタイトルと説明文を入力してください。説明文には、回答にかかる時間の目安と、回答の使い道を書いておくと回答率が変わります。
質問はプラス記号のボタンで追加し、右側のメニューから形式を選びます。質問の順序は後から入れ替えられるため、まず思いつくまま並べ、最後に整えるほうが早く進みます。
配布は右上の送信ボタンから行います。リンクを共有する方法、メールで送る方法、Webページに埋め込む方法が選べます。社内向けであればリンクをチャットで共有する形が手軽でしょう。

アンケート以外にも、フォームは幅広く使われています。何に向いていて何に向いていないかを、先に押さえておきましょう。
向いているのは、決まった項目を多数の人から集める業務です。研修の受講申込、社内イベントの出欠、備品の請求、問い合わせの一次受付。いずれも入力内容が定型で、集めた後の処理が一律であるという共通点があります。
向いていないのは、集めた後に人の判断が入る業務です。承認と差し戻しが発生する申請、状態が段階的に変わる案件管理、担当者の割り当てが必要な依頼。フォームには進捗を管理する仕組みがないため、集めた後は手作業で追いかけることになります。
| 業務 | フォームの適性 | 理由 |
|---|---|---|
| アンケートや意識調査 | 適している | 集めて集計するという流れが完結する |
| イベントの出欠確認 | 適している | 回答が一度で完結し、集計も単純 |
| 問い合わせの受付 | 条件付きで適している | 受付はできるが、対応状況の管理は別途必要 |
| 稟議や経費の申請 | 適していない | 承認、差し戻し、代理承認に対応できない |
この見極めを最初に行っておくと、無理な使い方を避けられます。道具の限界を知らずに使い続けることが、非効率につながります。

質問形式は10種類以上あります。どれを選ぶかで、後の集計作業にかかる時間が何倍も変わります。
| 形式 | 適した用途 | 集計のしやすさ |
|---|---|---|
| ラジオボタン | 選択肢から一つだけ選ばせる | 自動でグラフ化される |
| チェックボックス | 該当するものをすべて選ばせる | 集計はできるが、組み合わせの分析には加工が必要 |
| プルダウン | 選択肢が多く、画面を短くしたい場合 | ラジオボタンと同等 |
| 均等目盛 | 満足度など、程度を数値で聞く | 平均値を出しやすく比較に向く |
| 選択式グリッド | 複数の項目を同じ尺度で評価させる | 設問数を抑えつつ多くの情報を得られる |
| 記述式と段落 | 自由な意見を求める | 手作業での読み込みが必要になる |
自由記述は貴重な情報源ですが、多用すると集計の負担が大きくなります。目安として、自由記述は最後に一問だけ置くのが実用的でしょう。選択肢で答えられることは選択肢にして、そこから漏れた意見だけを自由記述で拾う構成にしておきましょう。

設問の並べ方や言葉選びで、回答率は目に見えて変わります。ここは経験の差が出る領域です。
最初の質問は、答えやすいものにしておきましょう。冒頭に自由記述や属性の入力を置くと、そこで離脱する人が出ます。選択肢を選ぶだけの質問から始め、負荷の高い質問は後半に配置する。この順序を守るだけで、途中離脱は減ります。
必須項目の指定にも注意が必要です。すべてを必須にすると、答えたくない質問がひとつあるだけで送信されなくなります。判断に必要な項目だけを必須とし、それ以外は任意にしておきましょう。
最後の項目は集計時に効いてきます。尺度がばらばらだと、部門ごとの比較も経年の比較もできなくなります。定期的に実施するアンケートほど、最初の設計が後々まで影響します。

質問を作り終えたら、設定を確認しておきましょう。ここを見落とすと、集めたかったデータが集まりません。
回答に関する設定では、メールアドレスを収集するかどうかを選べます。誰が回答したかを把握したい場合は、確認済みのアドレスを自動的に収集する設定が確実です。ただし匿名を前提とした調査では、この設定が回答者の警戒を招きます。目的に応じて選ぶとよいでしょう。
回答を一人一回に制限する設定も用意されています。有効にするとGoogleアカウントでのログインが必要になるため、社外向けのアンケートでは回答のハードルが上がります。組織内の調査に向いた設定といえるでしょう。
ファイルのアップロードを求める質問形式は、回答者にGoogleアカウントでのログインを求めます。社外の不特定多数へ配布するアンケートでこの形式を使うと、回答できない人が出ます。配布先を確認したうえで採用しましょう。
表示に関する設定では、進行状況バーの表示や質問の順序をシャッフルする機能を選べます。設問数の多いアンケートでは、進行状況バーを表示しておくと離脱を抑えられます。

よくできたアンケートでも、届かなければ回答は集まりません。配布の方法によって、回答率は大きく変わります。
Googleフォームの送信ボタンからは、メールで送る方法、リンクを共有する方法、Webページへ埋め込む方法が選べます。社内向けであれば、普段使っているチャットへリンクを投稿する方法がもっとも反応が早いでしょう。メールは見落とされやすく、後回しにされがちです。
依頼の文面も回答率を左右します。所要時間の目安、回答の締切、そして回答結果を何に使うのか。この三点を書いておくだけで、着手のハードルは下がります。とくに所要時間は効果的で、三分で終わると書かれていれば、その場で開いてもらえる確率が上がります。
| 配布の方法 | 適した場面 | 回答率を上げる工夫 |
|---|---|---|
| チャットでリンクを共有 | 社内の調査 | 締切の前日に再度投稿する |
| メールで送信 | 社外の関係者へ依頼する | 件名に所要時間を入れる |
| Webページに埋め込む | 問い合わせや申込の受付 | 入力項目を最小限にする |
| 二次元コードで案内 | 会場での受付や研修後の回答 | その場で回答してもらう時間を確保する |
最後の方法は、研修や説明会の直後に効果を発揮します。会が終わってから依頼すると回答は集まりにくいものですが、終了前の三分を確保すれば、参加者の多くから回答を得られます。回答率は文面よりも、依頼するタイミングに左右されます。

全員に同じ質問をすると、該当しない人にとって無駄な設問が並びます。回答者ごとに聞く内容を変えられる仕組みがあります。
フォームをセクションに分け、選択肢ごとに移動先のセクションを指定すると、回答内容に応じた分岐を作れます。たとえば「利用したことがある」と答えた人にだけ詳細を聞き、「利用したことがない」人には理由を聞く、といった構成が可能です。
分岐を使うと設問数の総量は増えますが、一人あたりが答える数は減ります。回答者にとっては短いアンケートに感じられ、集計する側は必要な情報を精度高く得られます。設計に手間はかかるものの、繰り返し使うアンケートであれば投資に見合うはずです。

一度きりの調査より、定期的に実施する調査のほうが価値は高くなります。変化を追えるからです。ただし準備が要ります。
繰り返す前提であれば、フォームを毎回作り直さないほうがよいでしょう。既存のフォームをコピーして使えば、設問も設定もそのまま引き継がれます。設問を変えてしまうと、前回との比較ができなくなります。
変更したい設問が出てきた場合は、既存の設問を残したまま追加しておきましょう。どうしても変える必要があるなら、その回から比較の基準が変わったことを記録に残しておきましょう。
| 準備すること | 具体的な内容 | 怠ったときに起きること |
|---|---|---|
| フォームの複製 | 前回のフォームをコピーして使う | 設問の表現が微妙に変わり、比較できない |
| 回答先の分離 | 回ごとに別のスプレッドシートへ集約する | 回答が混ざり、時期の判別ができない |
| 実施時期の固定 | 毎年同じ時期に実施する | 季節による差と実際の変化を区別できない |
| 集計方法の記録 | どう計算したかを文書に残す | 担当が代わると数字の意味が失われる |
三番目は見落とされがちです。前回が繁忙期、今回が閑散期であれば、満足度の差は業務量の差かもしれません。比較できる形にしておくことで、続けた分だけ意味のある変化が見えてきます。

回答が集まったら、フォームの回答タブで概要を確認できます。選択式の設問は自動的にグラフになるため、傾向の把握はその場で済みます。
踏み込んだ分析を行うなら、スプレッドシートへの連携が基本になります。回答タブからスプレッドシートを作成すると、回答が自動的に転記され、以降の回答もリアルタイムで追加されます。集計関数やピボットテーブルを使えば、属性ごとの傾向も追えます。
また、フォームの回答タブから、新しい回答があったときにメールで通知を受け取る設定を有効にできます。問い合わせや申込を受け付けるフォームでは、設定しておくと安心です。回答が入るたびに通知が届くため、確認漏れを防げます。
回答者への自動返信も設定可能です。設定画面で回答のコピーを送信する項目を有効にすると、回答者が自分の入力内容を控えとして受け取れます。申込の受付では、この控えが「送信できたのか」という不安を解消します。問い合わせの重複も減ります。
さらに踏み込むなら、スプレッドシートと組み合わせた処理が可能です。回答が追加されたタイミングでスクリプトを動かし、担当者へ内容を整形して通知する、別の管理表へ転記する、といった処理を自動化できます。件数が多いフォームほど、この投資は回収されます。
三つ目は忘れられがちです。締切を過ぎたフォームが開いたままだと、期限後の回答が届き、受け付けるかどうかの判断が必要になります。締切の設定と同時に、締め切る担当も決めておきましょう。

手軽に作れるからこそ、統制が効かないまま社外へ公開されているフォームが存在する、という状況が生まれます。
まず確認したいのは、共有範囲の設定です。組織内向けのつもりで作ったフォームが、リンクを知っている全員に開かれる状態になっていないかを点検しておきましょう。Google Workspaceの管理コンソールでは、フォームを含むファイルの外部共有を制御できます。
個人情報を収集する場合は、利用目的の明示と保管方法の決定が必要です。フォームの説明文に利用目的と問い合わせ先を記載し、回答が保存されるスプレッドシートの共有範囲も限定しておきましょう。回答は自動的にドライブへ保存されるため、フォームだけを管理していては不十分です。
加えて、作成者が退職した後のフォームの扱いも決めておく必要があります。個人のドライブに置かれたフォームは、その人のアカウントを停止すると扱いが面倒になります。継続的に使うフォームは、共有ドライブに置いて所有者を組織にしておくと安心です。

Googleフォームは情報を集める道具です。集めた後に承認や差し戻しが発生する業務には、そもそも向いていません。
休暇申請や経費精算をフォームで受け付けている組織は少なくありません。しかし、承認者への通知、差し戻し、代理承認、条件による承認ルートの変更といった処理は、フォームの機能では実現できません。結果として、集まった回答を人が手作業でさばくことになります。
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アンケートはフォームで、申請と承認はワークフローなど、役割を分けたほうが、どちらも本来の力を発揮するケースもあります。詳しくはサテライトオフィスのワークフロー for Google Workspaceから詳細をご覧ください。

Googleフォームでアンケートを作ること自体は簡単です。差が出るのは、回答を見て何を決めるのかという設計と、集計を見据えた質問形式の選び方にあります。
答えやすい順に並べ、必須項目を絞り、自由記述は最後にひとつ。この基本を守るだけでも、集まる回答の質は変わります。定期的に実施するものであれば、尺度をそろえて経年で比較できる形にしておきましょう。
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